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2010年6月 4日 (金)

石を運ぶ

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石と人類の縁は長い。石器時代なんて言葉はまさにそうだ。

石はまた、昔から建築資材に使われてきた。

城の石垣なんぞを見ると、

どうやって人力のみで組み上げたのか不思議に思う。

琵琶湖周辺には古代から

朝鮮半島の渡来人の技術集団が住んでいて、

戦国時代から江戸時代にかけて、

大名から重宝され、石積み仕事に働いていたという。

それにしても石である。しかも石垣などは巨大な石である。

人力のみの昔はどうやって扱ったのだろう。

まず切る事からだ。

現代だったらダイヤモンドの付いた巨大な鋸で

ギュイーンと切ってしまう。

だが機械などに動力化されたのは昭和になってからだ。

そんなもののない昔は、

少しずつツルハシなんぞで切り込みを入れて、

でかい金槌でぶったたいて割り、

その後ノミで整えたのだろうか。

運ぶのはどうか。

城の石垣などはとてつもなく重いので、

丸太を下に引いて転がすのが賢明だ。

ピラミッドの建築現場の絵図でもおなじみである。

動力を使わない、重さがある、となると、

車輪付き荷車という発想が出てくる。

とんでもない所に走って行かない様、

荷車を導いてくれる道が必要になって来る。

さあ軌道の出番だ。

高低差をうまく使えば、動力を使わず軌道を使って、

石切り場から船着場のある川や海まで運び出すことができる。

空の台車くらいなら、牛や馬で山へ運び戻すぐらい可能だ。

そう考えると石切り場=軌道という図式は必須ではないか。

日本には石を運び出す軌道がどれほどあったか分からないが、

総延長数十キロの軌道から数mの軌道まで、

それこそ無数の軌道があったに違いない。

ひょっとしたら今も残っていないだろうか。

いつもの悪い空想が頭をよぎり、石の有名な産地を物色する。

関東地方で有名所といえば、まず大谷だ。

早速車を北に走らせた。

栃木県は宇都宮のはずれに大谷はあり、

ここの石が使われてきた歴史は古く、

奈良時代から既に使われていたらしい。

石のなかでも軽くて柔らかいので加工しやすかった為であろう。

手で触るとザラッと表面の粒が指に付く位柔らかい。

もっとも本格的に採掘されたのは明治になってからで、

最盛期には軌道の人車を押す人の吹くラッパ音で賑わったらしい。

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大谷には大谷資料館があり、

東京ドームがすっぽり入ってしまう地下空間を見ることが出来る。

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さすがに軌道は残っていないが、

石を運んだ人車が展示されていた。

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地下入り口はその人車の横にあるが、

人一人入れる位の入り口からは想像できないほど中は巨大だった。

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平均温度が13度C。

半そでで入ると長時間いるのは厳しいくらい涼しい。

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一通り中を見て回った。

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さて次の有名所は茨城県の笠間だ。

こちらは御影石である。

重量があり硬く、磨くと光沢の表面になるアレなのだ。

正式名称は稲田白御影石という。花崗岩だ。

愛知県の明治村に保存されている帝国ホテルは、

この石が使われており、いわゆる高級品なのだ。

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もちろんここも軌道などは残ってはいないが、

地元メーカーの㈱タカタさんがやっている

「石の百年間」という資料館に台車が残っていた。

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台車以外にも軌道に関する資料が沢山あり、

明治時代に軌道を施設する際国に許可を求めた資料もある事から、

相当大規模な軌道だったのであろう。

古い写真には石切り場を這う様に敷かれた軌道が写っていた。

ここに行って初めて知ったのだが、

タカタさんでは採掘を今年で終了したとの事だ。

更にこの資料館も5月末をもって閉館するそうだ。

なんで、とタカタさんの社員に話を聞いた所、

中国などの輸入品が安く、採掘するより海外品を買ったほうが

安いからだと言う。

ここにもグローバル化に飲み込まれる産業があったのだ。

ただし石の備蓄も10年分以上あるとの事で、

石材産業の商売のスパンの長さに呆れてしまった。

ぜひ石切り場を見てみたいと思い、

資料館の向こうに聳える石切り場の山を指差すと、

もう中に入るんは無理だと言われてしまった。

残念がっていると、

隣の会社では見せてくれるので紹介するよと言われ、

好意を素直に受けた。

でも、あの向こうに見える同じ山なのではと尋ねると、

いや会社の中にあるよと言われ、?と疑問に思いつつも

その隣の会社へ向かった。

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隣の会社はところどころ軌道の痕跡があった。

「石切り場はそこですよ」とその会社の社員にも言われ、

またも?と思い、どこに山がありますかと聞いたところ、

山ではなく地面です、50mぐらい歩いていけば見れますよ、と言われ、

しかたなくとぼとぼと歩いていったところ、驚愕の風景に出くわした。

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なんと月面にあるクレーターか、隕石が地球に衝突したかの様な

巨大な穴の風景が足元に広がっていた。

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深さもどのくらいあるのかちょっと見当がつかないくらい深い。

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夢中でカメラを向けていると、採掘場の崖のてっぺんで、

並べたトラックの前に立って、「S急便」の男たちが、

なぜか空に向かって拳を突き上げていた。

まさに石の男たちであった。

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